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Touching Wild Horses 野生の馬との邂逅

カナダ映画 (2002)

カナダ人の子役マーク・レンドール(Mark Rendall)の2本目の主演映画。1本目は子供向きなので、本格的な大人向きはこれが最初。マークはカナダ人の歴代の子役の中で、最も幅広くTVに映画にと活躍した少年である。現在も俳優だが、私のリストでは2005年の『Spirit Bear』までを対象としている。この映画の舞台となっているのは、カナダ大西洋岸のノバスコシア州から最短でも175キロ離れた孤島セーブル島で、野生の馬で知られている。現在の人口は5人だが、映画での設定は臨時住民ののマークを入れて3人。42キロもある細長い島に3人では、無人島に近い。その手付かずの自然の中で一緒に暮らすことになった伯母と甥の物語である。

マーク(偶然、俳優と同じ名前)は交通事故で父と妹を亡くし、母は昏睡状態。そこで、唯一の親戚である、遠い島で野生の馬の生態を観察して暮らしている伯母に預けられることに。世捨て人のように暮らしてきた気難しい伯母と、周囲に人っ子一人いない環境で、膝を付き合わせて暮らしていくことは大変なことだった。しかも、島の自然は厳しい。伯母はいくつも、「してはいけないこと」「守るべきこと」を申し渡し、学力レベルの低さにあきれて猛勉強も要求するが、他に行く所がないので素直に従うしかない。ところが、暴風が島を襲った翌日、異例に遅く産まれた子馬の母馬が海岸で魚網にまみれて死んでいた。伯母は、野生の馬には絶対に手を出さない条件で島に居住を許されている。それなのに、マークは子馬が可哀想なのでエサを与えてしまう。それが、3人目の居住者である政府の管理官を巻き込み、大事へと発展していく。

マーク・レンドールは、格別に可愛い子役ではなく個性的でもないが、どんな役でもこなせる演技力と、本人固有の素朴で誠実で心優しい人柄が魅力である。出演者がほとんど2人だけという異例の映画で、TVで幅広く活躍しているジェーン・シーモア(Jane Seymour)と対等にぶつかり、1時間半、画面に惹き付ける力を持っている。


あらすじ

交通事故で父と妹を亡くし、母も昏睡状態なので、マークは伯母に預けられることになった。民生委員に連れられ、島に立ち寄る船まで連れていってもらい、そこで引き渡される。伯母は、2人を見るなり「遅刻ね」の一言。「大変だったわね」でも「いらっしゃい」でもない。そして、「ルール1:家族のことは話さない」「ルール2:フィオナと呼ぶこと」と注文。その後でようやく、父と妹の死のお悔やみを。プラス、「死は、突然訪れる。誰にでもね。苦しまなくて良かった」。
  

9月29日。島には埠頭がないので、ゴムボートで運んでもらう。海岸には家が一軒建っているだけ。「ここに住んでるの?」。「ここじゃない」。さらに、「でも、家もお店もないじゃない。誰もいないよ」とマーク。「違う。大勢いるわよ」。「何人?」。「君が来たから、3人」。「住みたくないよ」。「私だって一人がいい。人生、思い通りにはならないの。今が、その時ね」。そして、バギーカーで出発。ところが、「食料品は歩けないし、ガソリンも節約したいから、歩いて来なさい」と冷たい命令。「どこなの?」と訊くマークに、「真っ直ぐ進みなさい。1時間てトコね」。何ともはや。
  
  

途中で霧に巻かれて道に迷い、迎えに来てもらってようやく家に到着。トイレは外にポツリ。「まさか」とマーク、「便座は、下げておくこと」とフィオナ。着くとすぐに学力を知りたいからとテストをさせられ、「バカには見えないのに、出来は最低ね」と酷評。さらに、「数学、悲惨。綴り字、最低。文法、理解不能」。そして、「こんな学力で、よく6年生になれたわね?」。そして、毎日試験して理解度をチェックすると宣告される。翌日、フィオナは、マークに野生の馬を見せに行く。そして、「触ったり、食べさせちゃいけない」と申し渡す。この島の野生の馬は政府の保護下にあり、フィオナは馬の研究をするという名目で、特別に島での居住が許されているのだ。
  

マークは、留守中、フィオナの私物や島に漂着した「お宝」を勝手に見ていて、こっぴどく叱られる。家から逃げ出したマークに、フィオナは言い聞かせる。「あんな風に怒鳴って悪かったわ。でも、ほんとに頭にきたの。でも、知っておいて。君を、叩くことは決してしない」(マークは以前、父によく殴られていた)。そして、「私の個人的な物に触らない」、「便器の蓋は、必ず閉めること。昨夜は落ちるところだった」とも。最後の命令で、マークにもやっと笑みが。
  

マークは次第にフィオナのペースに慣れていき、成績も最初のD-から、誕生日の前夜には初めてBがもらえるまでになる。そして11月12日の誕生日。前に勝手に見ていて叱られた18世紀初頭のピストルをプレゼントされ、さらにバギーカーも運転させてもらう。「壊したら命はないわよ」の但し書き付きで。
  
  

11月30日、政府の国立公園・管理官がセスナで帰着。許可外の子供の滞在は認めないとする管理官に対し、「あの子を島から追い出すなら、今すぐ言わないと。あなたから言ってよ。私は証拠写真を撮るから。打ちひしがれた子供への、政府の仕打ちのね」と脅して、何とか許してもらう。この日良かったことは、初めてA-をもらったことと、管理官が運んできた手紙に、母が昏睡状態から醒めたと書いてあったことだ。「ママに、手紙を書きなさい」と勧めるフィオナ。
  
  

12月に入り、風の強い日にマークが海岸で馬のスケッチを描いていると、天候がどんどん悪くなってきた。あわてて島では必須のレインウェアを着て家に向かうが、悪化のスピードの方が早い。フィオナが心配してバギーカーで迎えに来てくれるが、帰宅途中で転覆。やっとの思いで官舎まで辿り着く。翌朝、家に戻り、マークはお宝が標着していないかと海岸へ。すると、そこには遅産まれの子馬が一頭、魚網が絡まって溺死した母馬のそばに立っていた。
  
  

「子馬は どうするの?」と訊くマークに対し、「何もしない。放っておくの」とフィオナ。「あんなに小さくて、食べ物や水は 探せるの?」。「自分で学ぶでしょ」。「できなければ?」。「死ぬだけ」。野生の馬なので手を出すことは禁止されているのだ。それに、エサをやってしまったら、将来野生に戻れる保証はない。しかし、マークは夜こっそりと忍び出すと、子馬に穀物を与えてしまう。子馬の頭を優しくなでてやるマーク。
  

それに気付いたフィオナは「島に来たのが間違い。出ておいき!」と激怒し、それに対しマークは「いいさ。こんな島なんか大嫌いだ!」「あんたも嫌いだ!」と言い返して、家を飛び出す。しかし、お互いに冷静になり、マークが戻ってきて「ごめんなさい。本気で言ったんじゃない」「ここに居させて。お願い」「僕、あなたがママなら良かった」と謝る。ここまで言われて心を動かされない女性はいないだろう。
  
  

さらに、その夜、マークは悪夢から醒めると、「僕が、パパと妹を殺したんだ」と打ち明ける。「僕の責任だ」とも。要は、父と母はいつも怒鳴り合ってばかりいた。その夜も、遅く帰ってきた父が怒鳴り散らす。マークは、頭にきて「みんな、大嫌いだ!」と叫んで家を飛び出した。そのマークを捜しに一家3人で車に乗り、脇見運転でパトカーと衝突して大事故になってしまったのだ。「僕のせいだ」と泣くマーク。「君には、何の責任もない」と言ってマークを抱きしめるフィオナ。
  

子馬の面倒を見るのを認めてやることにしたフィオナ。子馬はジョンと名付けられ、家の中にも平気で入り込むようになった。そころが、ちょうどジョンが家の中にいる時、管理官が来てしまう。いななき声が聞こえ、管理官がドアを開けると、いきなり子馬が飛び出してきた。「本土に着いたら、刑事告訴が待ってるからな」と言い捨てて去っていく管理官。「僕の責任だ。言われた通り、放っとけばよかった。ごめんなさい、フィオナ」と謝るマーク。マークは、夜になってこっそり管理官を訪ねると、誕生祝にもらったアンティークのピストルと交換に免罪をお願いする。「僕は出て行きます」「でも、ここは、伯母さんの“家”なんです」と。ほろりとしたのか、ピストルが高価な貴重品だったのか、幸いOKをもらえた。
  
  

残された重要な仕事は、子馬を自然に帰してやること。そのためには、いつも家に押しかける馬を追い払わなくてはならない。ドアにかんぬきを取り付けて侵入しないようにする。外では夜遅くまで、何とか家に入ろうとする子馬の音がやまない。それは子馬が大好きだったマークにとって辛い試練だった。
  

その夜、夢の中で、海岸で子馬と仲良く走った後、お別れをするマーク。幻想的なシーンだ。
  
  

翌日、もう馬は去っていた。そして、2人で馬の群れを見に行くと、そこには行動を一緒にしている子馬の姿が。「もう、大丈夫だね」とマーク。すると、フィオナが管理官にあげたはずのピストルを返してくれた。「どうやって、返してもらったの?」とマーク。「島を出ることに同意した」。「でも、ここは家でしょ? 生き甲斐でしょ?」。「多分、世界中を見てみたくなったのね」「本を、書きたくなったのかも」。そして、マークを抱きしめながら「来てくれて、ほんとに良かったわ」とほほ笑むフィオナ。そこに、母を乗せたセスナが着く。ラストに、マークが大人になってからのナレーションが入る。「ある日、彼女から突然電話があった」「わが子との、再開だった」。とても心温まるエンディングだ。
  
  

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